犬 VS Amazon
Amazonで購入した物が届いた。
歯ブラシしか買った覚えがないが、なんだこの大きな段ボールは?
開けてみると、中には申し訳なさそうに歯ブラシ2本だけがテープで貼り付けられていた。
また、かさばるな……。
非常に便利なので、ついついAmazonに依存してしまうが、どうしても段ボール問題が発生する。
ふと、収納場所に目をやると、そこには山のように積まれた段ボール。
また、こいつを車でスーパーまで運ぶことを考えると、ため息が出てしまう。
資源ごみを家庭用のゴミで出せれば、凄く楽なんだが……。
なんとかならんかな?
そんなことを考えていると、ドアの向こうから彼がやってきた。
「俺にまかせろ」
犬が自信に満ち溢れた表情で、私を見上げている。
「お前に出来るのか?」
段ボールは、これだけではない。
もっと大きなモノもある。
それらを全て解体するのは、至難の技だ。
大丈夫なのか?
「早くよこせ」
どうやら本気らしい。
「分かった……信じよう。」
まず、今日届いた段ボールを渡してみる。すると、彼は直ぐに攻撃を開始した。バキバキバキっ!
数カ所に歯を突き刺し、一気に引き千切る。そして噛んでは千切り、千切っては噛む。
すっ、凄い!
あっという間に解体作業は完了! 完・全・勝・利!
これがお前の力なのか……。
よし、お前の実力は分かった。
じゃあ、こいつを頼む。
先程とは比較にならない大きさ。
彼の体の倍はある、メガサイズの段ボール。
どうだ?流石に無理か?
「舐めるな」
ガリっ!闘争本能むき出しの表情!このサイズを相手にしても、引く気はないらしい。
力強く、大きな敵をバラバラにしていく。
まさか、こいつも解体出来るのか……。
すると、あれほど勢いよく解体していたのに、突然作業を中断して、こちらに視線を送ってきた。
なんだ、どうした?
ズズズっ。段ボールを必死に引っ張っている。
そして少しずつ私に近づき、それを押し付けてきた。
??
えっ?持つの?
半信半疑で段ボールの端っこを持つと、また勢いよく引き千切りはじめた。
手伝えってこと?
どうやら、作戦変更らしい。
私が持っている周辺を中心に千切りはじめる。
「しっかり持っていてくれ!」
私に合図をしながら、ガジガジ解体を進めていく。
まぁ、仕方がない。
さすがに相手が大き過ぎた。
これくらいの協力は、やむを得ない。
しばらくすると、今度は彼が段ボールを咥えたまま動かなくなった。
??
今度は何?
えっ?俺に引っ張れってこと?
また作戦変更らしい。
彼が咥えた段ボールを私が引き千切る。
咥えては千切り(私が)、千切って(私が)は咥える。
これは……自分でやってるのと殆ど変わらない。
こんな感じで全部を解体するなら、捨てに行った方が早い。
しかし、ここまで頑張ってくれたのだ。
それで良しとしよう。
「ありがとう、もういいぞ」
そう言って段ボールを片付けようとすると
えっ?立て篭もった(・・?)
これは、まさか……遊べということか?
結局、この後30分ほど遊ばされることになる。
段ボールの中を行ったり来たり。
外へ逃げたかと思うと、また段ボールの中に籠る。
そして、齧るから持ってくれと、せがまれる。
最初から車で捨てに行った方が、早かった。
そんな悲しい結果になったが、彼だけは満足した表情をしている。
犬の "まかせろ" は信用するな!
彼らは、基本的に人間の作業を増やす生き物なのだ。