おっさん革命

犬のこと中心のブログ

犬と台風と靴下の話

この時期にはめずらしく、台風が近づいている。
夜には上陸する可能性もあるらしい。

まだ暴風域にも入っていないのに、既に風が強く、雨も降り始めた。

カーテンを開けてみると、遠くの草木が大きく左右に揺れている。

「さすがに無理か……。」

時計に目をやると、午前10時40分。
普段なら、ドッグランへ向かう準備をしている時間だ。

飼い主が、この時間に準備をしていない。いつもとは違う様子に、何かを感じているのだろうか?
今日は大人しく、寝そべって遠くを見ている。f:id:kmsif:20210727194644j:plain
どこか、諦めの表情にも見える。

仕方がない。
雨程度なら私が頑張れば済む話だが、台風は危険を伴う。
連れて行くわけにはいかない。

「今日は、お家で遊ぶか!」

……。f:id:kmsif:20210727195316j:plain話しかけても、無反応。
聞こえているはずなのに、私の方を見ようともしない。

「どうせ、出掛けないんでしょ。」

彼の表情は、そう言っている。
面倒な子供と同じだ。ヘソを曲げている。

「仕方ないだろう。台風は無理だ。」

近づいて、彼を説得してみるが、話を聞く気は無いようだ。

目の前の私が視界に入っていない。f:id:kmsif:20210727201207j:plain何を言っても微動だにしない。ただただ、遠くを見つめているだけ。

しかし今回ばかりは、何をしたところで結果は同じ。
台風の日にドッグランへ連れて行くわけにはいかない。

「これ以上は、相手してやれない。悪いが、我慢してくれ。」

そう言い残して、2階へ上がろうとした、その時。

ガタッ!

背後で彼が立ち上がる音がした。

「今度は、なん……あっ!」
f:id:kmsif:20210727204055j:plainさっきまで、不貞腐れていた彼が、私の靴下を咥えて立ち上がっていた。

「どういうつもりだ?」

先程とは対照的に、彼の視線は私を捉えて放さない。
そして私の目を見ながら、ゆっくりと靴下を床に置く。

ドッグランでもよく見せるこの仕草。

これは……挑発だ。f:id:kmsif:20210727210026j:plain

「もう一度聞く。どういうつもりだ?」

彼は、足元に靴下を置いたまま、静かに私を睨み続ける。
私から絶対に視線を外さないが、直ぐに靴下を咥えて逃げられるよう、神経を研ぎ澄ませている表情。
前足には、しっかりと体重を乗せている。

にわかに空気が張り詰める。

「かかって来いよ。」

外は台風の影響で、雨が降り始め、強い風が草木を大きく揺らしている。

天候は荒れそうだ……

「返せっ!」

取り返そうと手を伸ばした瞬間、彼は素早く靴下を咥え、左にステップ。そのまま部屋中を駆け回る。

追いかける私を嘲笑うかのように、ソファや椅子の上を跳ね回る。

こいつ……私を釣って運動するつもりだな。
人間を舐めるなよ!

お前のペースには乗らない。
人間の戦い方を見せてやろう!
ほれっ!
箱からおやつを取り出す。

「さぁ、靴下を放すんだ。そうしないと食べられないぞ。」

卑怯?これが人間だ。

彼は靴下を捨てて、目の前でお座りをしていた。呆れるくらい素早い反応。やはり、おやつの効果は絶大だ。

靴下を回収し、おやつを与える。

私の勝ちだ。

「もう、するんじゃないぞ。」

そう言い残して、リビングのドアを閉めようとすると、背後から声が聞こえてきた。

「まだだ」

そっと振り返ると、

「!!」

今度は、椅子の上で靴下を咥えている。f:id:kmsif:20210727224638j:plain
しまった!私が持っているやつの相方。

返せと言っても、素直に返す気はないだろう。

まったく……

またおやつを取り出そうとしたが、そんな私を見ながら、彼は咥えた靴下をブルブルっ、と振り回す。

「もう放さないぞ。」

……分かった、
とことん付き合ってやろう!

今度は、正々堂々捕まえてやる。

彼は、私を睨みつけながら、再び挑発をはじめる。

「かかって来いよ!」


外の雨と風は、次第に強くなっていた。
いよいよ、ここれからが台風の本番。

天候は、まだまだ荒れそうだ。

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